Geography

1992
Geography

この写真は、私が1992年冬に撮影した自分の原点ともいえる作品だ。当時は写真の平面性にこだわっており、視線が奥へ行かない、紙の表面でストップしてしまうような写真を撮っていた。最初は都市を、望遠レンズを使って平面的に、遠近感がなくなる様に撮っていたが、最終的には平面をそのまま平面的に撮るという単純な方法に行き着いた。

撮影した場所は、東京湾岸の埋め立て地にある舗装していない巨大な空き地で、現在はショッピングモールが建っている。何もない所だったが、エメラルドグリーンに変色した水たまりには渡り鳥が集まっていて、砂利の中に卵を産んでいた。当時流行っていたニュー・トポグラフィクスの影響もあり、広大で空っぽな空間を撮影している時、その場所の一部に鉱物質な地面がある事に気づいた。金属的で所々が錆びており、石灰のような物質が表面に浮いているのがおもしろかった。細部を徹底して捉えるために、撮影には大型カメラ8×10を使用。フラットに光がまわる明るい曇りの日を選び、影が出ないようにした。そして、表現する要素を出来るだけ少なくすることで逆に様々なイメージが生まれる写真にしようと思った。この写真を見ていると作者でも距離感がよくわからなくなる。都市の下にある地面がそのまま、都市を上から見た衛星写真のようなイメージに変わる。埋立地の地面がどこかの惑星の表面のようにも見えてくる。遠近法を否定した、ただの平面が様々な距離やイメージの揺らぎを生み出している。

その後、主に東京をテーマに都市風景を撮影し続けているが、一見何の関係もないこの作品は、都市の底にある地形に対する関心、密度や細部に対するこだわりなど、現在の自分の作品にどこか繋がっているように感じている。